★ABOUT JESUS Vol.4

●Vol.4:"That sav'd a retch like me..."



ゴスペルは明るくてハッピーなだけではなくて、そこに光が差し込むべき暗闇があって初めて成立する、というようなことを前回書きました。闇から光へ、絶望から希望へ、というこの転換のイメージが、実はキリスト教にはとても大事なのです。ですので、今回はそこをもうちょっと考えてみたいと思います。

恐らくゴスペルの中でも最も愛されている歌の一つと言える、Amazing Grace(アメイジング・グレイス)。僕もこの曲を知ってから随分たちますが、本当に何度聞いても歌っても、心が揺さぶられる、素晴らしくまた力強い歌だと思います。一番の歌詞を見てみましょう。

Amazing grace, how sweet the sound,
that sav'd a wretch like me!
I once was lost, but now am found;
was blind, but now I see.


後半の2行は、いま述べた暗から明への転換のイメージがはっきり出ていますよね。迷子のように失われていた(lost)のに、見つけだされた(found)。目が見えなかった(blind)のに、今は見える(see)、と。

でも、ほんとに揺さぶられるのは"that sav'd..."のラインですよね。wretch(レッチ)というのは、何て訳したらいいのかな、ろくでなし、ひとでなし、嫌われ者..とにかく惨めで考えつく限り最低の人間ということです。a wretch like me=クズ、すなわちワタシ。

この曲を書いたジョン・ニュートンというイギリス人が、アフリカ人奴隷をアメリカへと運ぶ奴隷商人だったというのは有名な話です。ゴスペル・ミュージックのアーチストどころではありません。生きた人間を社会から、文化から、家族から引き離し、家畜以下のモノとして何百単位で扱い、売り、買い、また売り、あるいは死へ追いやる。想像を絶する商売です。

しかし、彼は奴隷商人をやるほどの人でなしだったから、逆に倫理に目覚めてキリスト教徒として矯正したのだ、と考えてしまっては、この歌の魅力が半減してしまうでしょう。奴隷貿易という汚い仕事から足を洗って今はサッパリしました、という意味で歌ったのではありません。ニュートンの転換は、もっと内面的なものだったようです。彼の奥深くには、奴隷貿易よりも更に想像を絶するような、暗いよどみがあったのかもしれません。知る由もありません。ありませんが、ニュートンが自分をwretchと呼んだのは、自身ではコントロールすることも解決することもできない、しかも放っておいたらヤバイことになるかも知れない、自分を破滅させるかも知れない、そんな恐ろしい何かが自分にある、と知っていたからではないかと思います。

この何か、を、聖書は罪(sin)といいます。よく誤解されますが、罪の程度(小さい罪とか重い罪とか)というものは、キリスト教ではあまり問題にされません。問題になるのは、罪はある、ということです。これははっきりしています。もう一つはっきりしているのは、罪は自分ではどうにもできない、という理解です。「改善(betterment)」という概念は、キリスト教には縁がないように思います。「良くする」ことはできないのです。だから、ずっと罪の中に生きていくか、そうでなければ、自分ではない誰かに、完全に、救ってもらわなければならない。しかも、救ってくれる相手がまた頼りないほかの罪人、というようでは駄目なのです。 人が神と出会うのはここです。

罪から逃げられない人を、神はどうやって救うのでしょう? 光によって、そう、Jesusによってです。イエス・キリストがsaviorと呼ばれるのは、人を罪から救うから。この歌でいうgrace(恵み)とは、Jesusその人のことです。Jesusによって、wretchは救われ、迷いは消え、目は開かれた。それが本当に実現するのなら、amazing、驚くべきことだと思いませんか。ましてや、自分の罪、自分の闇を一番よく知っている自分だからこそ、驚きも喜びも大きいのです。これもよく誤解されるのですが、「クリスチャン=善人」というイメージは大間違い。真実はその逆でなのです。82才になって、ニュートンはこう言ったそうです。"My memory is nearly gone, but I remember two things, that I am a great sinner, and that Christ is a great Saviour."(「記憶は衰えたが、二つのことだけは覚えている。私がものすごい罪人だということ。もう一つは、キリストはものすごい救い主だということ」) 『Amazing Grace』は、人が神の救いに出会うときの歌、闇に光が差し込んだ瞬間の、あのアッという驚きを思い出す歌なのです。 どうでしょう。もう一度歌ってみましょう。何を感じますか? では、また来週!(joking.)


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